人生が楽になる着物ブログ

着物やアートの視点から人生が楽になるお話をしています。

着物の格、これだけ知っておけば大丈夫!

本日は着物初心者にとって最もわかりずらい着物の格についてのお話です!

着物は民族衣装である前にファッションなので、
必ずしもルールに縛られすぎる必要はないです。

着方も自由。着る場所も自由なのですが、せっかく伝統文化でもあるので歴史や文化、どのように作られているのかを学ぶとより魅力を感じられるようになりますよ!

今日は若い人が着物を着るときに突っ込まれないための基礎知識をまとめていきます。
または、これから着物業界で働く若い人たちにも勉強になるように徹底解説していきますね。

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着物の種類と格について

着物は大きく分けて3つの格に分けることができます。

  • 礼装(第一礼装)
  • 略礼装(第二礼装)
  • 洒落着(外出着)

礼装の着物

人間の一生の中での通過儀礼としての用途で使われる着物といわますが、
簡単に言うと式と名前の付く場所に着ていく着物と覚えれば大丈夫です。
成人式・結婚式・葬式など。
基本的に4種類に分類されます。

黒留袖(くろとめそで)と色留袖(いろとめそで)

最も格の高い着物です。黒留袖は既婚女性専用。色留袖ももともとは既婚女性専用の着物でしたが、最近は未婚女性でも着るようになってきています。
柄の特徴としては生地が黒や無地で一色に染められていて、裾の部分にだけ模様があります。

留袖の名前の由来ですが、もともとは袖の身八口*1を縫い留めたため、袖を縫い留めるという言葉に語源があるといわれています。袖を縫い留めた理由ですが、昔は結婚したときに振袖の袖を切って短く縫い留める風習があったようです。
これは結婚することで振袖の長い袖が家事で邪魔になることや、昔は振袖の袖を揺らすことで男性にアピールする文化があったようで、結婚すると他の男性にアピールする必要がなくなるからともいわれています。
しかし、現在では通気性や着にくさの問題から身八口の部分は縫われていません。名前だけが名残として残ったそうです。

簡単に分けると黒留袖は結婚式で新郎新婦のお母さんや既婚の親族などが着る着物。紋が入っている。
色留袖は紋の数によって格が変わります。結婚式などに呼ばれた場合などに着ることが多い。

振袖(ふりそで)

礼装の着物で1番分かりやすいのは振袖ですね。卒業式などでレンタルする人も多く、耳にすることが多い着物だと思います。

袖を振るが語源といわれており、普通の着物と比べて袖が長いのが特徴です。
未婚女性が着る着物で最も格が高い着物です。柄も若々しいものが多く豪華なものが多いです。

紋付(もんつき)

紋付とは紋が入った着物のことです。上で紹介した留袖なども紋付の仲間にはなります。
しかしここでいう紋付は黒紋付と呼ばれる柄のない着物のことを指します。
葬式で着る喪服ですね。

略礼装の着物

結婚式、披露宴、結納、パーティー、入学式、卒業式、お茶会、お宮参りなど晴れやかな場に着ていく礼装着です。
礼装で紹介した留袖などと比べると格が低く、カジュアルなパーティーなどにも向いている着物になります。
基本的には2種類に分類されます。

訪問着(ほうもんぎ)

フォーマルな場からカジュアルな場まで幅広く着ることができる着物です。結婚による制限もありません。
名前の通り訪問するための着物。よそへお出かけするときに着る着物です。
一番の特徴は柄の染め方です。訪問着は一枚の着物に仕立てあがったときに肩から胸、袖から裾までが一枚の絵のようにつながって見えるようにデザインされています。
これを専門的な言葉では絵羽模様(えばもよう)といいます。着物の中で柄がつながっているのでとても豪華に見えるのが特徴です。

附下(つけさげ)

この附下については着物になじみのない人はまず知らないと思います。
基本的には訪問着と同じで格も一緒なのですが、柄の染め方だけ違います。
附下も訪問着のように肩、胸、袖、裾に柄が入っているのですが、訪問着のように繋がってはいません。
そのため訪問着に比べると少し落ち着いた印象に見えます。
この附下ができた経緯ですが、戦中に豪華な着物は贅沢だと訪問着の柄をおとなしいものに変更したのが始まりだともいわれています。
単純に訪問着の柄が繋がっていないものを附下と覚えても間違いではないですが、時代背景を知るとより覚えやすくなりますし、
着物が着られてきた時代を感じられてより魅力を感じられるのではないかと思います。

洒落着の着物

次は洒落着。かたい言葉を使うと外出着とも言いますが、簡単にいうとおしゃれできる着物や普段着としての着物です。
街にお出かけしたり、お稽古や旅行などでも使います。もちろんお家の中で着ても素敵です。
正直なところここが一番重要です。上で紹介した礼装はある程度ルールが決まっていますが、洒落着はあいまいな部分が多かったり、イレギュラーなものも多いです。
しかし、着物を普段のファッションとして着る場合はここのグループを主に着ることになるので一番身近で面白い部分でもあります。

まず大前提として、洒落着以外の礼装の着物は一部の例外を除いてほぼすべてが染物の着物です。
しかし、洒落着の中には織物の着物も含まれています。


・染物の着物
真っ白の生地を織ってから染色して色をつけたり、模様を作っている着物。
(色無地・江戸小紋小紋など)


・織物の着物
まず生地を織るために使う糸を染めて、いろいろな色や質の繊維を織り込むことで模様を作っている着物。
(お召・紬など)

例外もありますがわかりやすく分けると以上になります。

色無地(いろむじ)

名前の通り黒以外の色で一色に染め上げた着物です。
基本的には洒落着の分類になるのですが、実は色無地には紋付の色無地があります。
紋を付けることで格が上がり訪問着と同じようにフォーマルな場でも使えるようになる特殊な着物です。
紋がない色無地を紋なしの色無地といい、これが洒落着に分類されます。
紋の付け方によっていろいろな場面で着れる着物になります。

江戸小紋(えどこもん)と小紋(こもん)

小紋とはその名前の通り小さな紋の着物。小さな模様を繰り返した着物を指します。
しかし、現在の着物では必ずしも小さい模様ではない場合もあるので注意が必要です。
デザインもどんどん変化してきているので現在は大きな柄をあしらった小紋の着物もたくさんあります。

見分け方としては、同じ柄がパターンになって繰り返されているものは小紋
柄が肩や、胸、袖などに来るように計算されていて、同じ柄の繰り返しになっていないものは訪問着や附下になります。

小紋は一番わかりやすい見た目のお洒落着です。観光地などで着物のレンタルなどをしているお店で置いてあるものはほぼすべてが小紋の着物になります。
柄もいろいろなものがあり自分好みの柄を探すのが楽しいです。

ただし、小紋の中にも江戸小紋と呼ばれる特殊な小紋があります。
江戸小紋はとても小さな文様を染めた着物で、遠目には無地の着物に見えるくらい細かい紋が施されています。
そのため、江戸小紋小紋の中では格が高く色無地のように使うことができます。帯との組み合わせによっては友人の結婚式などにも着ていける特別な小紋です。
染めるためにはものすごく細かい切り絵のような型紙を使います。

御召(おめし)

織りで柄を作られた着物をいいます。御召についてはかなり幅が広いです。
どんな柄を織っているのかで使える場所も変わってくるのですが、
ものによっては色無地のように使うことができたり、江戸小紋を織りで表現した御召もあります。
帯の合わせ方によっても格が変わったりもします。
染の着物と一番大きく違うのは質感です。織の組織で模様を作っているため厚みや立体感を感じるものが多いです。

紬(つむぎ)

真綿*2を紡いでできた太さに少しばらつきのある糸を使ってできた織物。
よく見ると糸に節のように太くなっている部分があり、生地に立体感がある。
丈夫なため昔から作業着や普段着で使われていた。

一番伝えたいこと

今回は着物の格についての解説をしました。
なかなか初心者にとってはわかりにくい部分が多いのでざっくりとイメージがつかめたらと思います。
ここまで着物の格について書いてきましたが礼装を着るような場でなければ、おしゃれとして着物をどうやって着るかは着る人の自由です。
最近は着物を洋服と組みあせたりしながらおしゃれに着こなしている人もたくさん増えてきました。
そういった新しい感性がこれからの着物文化を作っていくと思っています。

そのうえで、格の分け方や違いを知ることで着物文化がたどってきた歴史や、着物を作るための染織技術にも興味を持つともっと着物は楽しくなります。
着物はまるで芸術品を身にまとっているかのように美しい衣服です。
でも見た目の美しさだけでなく、
民族衣装としての文化や職人さんが手作業で作り上げる伝統工芸の魅力を知ると着物の魅力や面白さは何倍にもなります。


このブログでは着物に少しでも興味を持ってくれる方が増えるように、

難しい染織の技術や着物の文化についてできるだけわかりやすく発信しています。

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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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*1:着物を着たときに脇のあたりの縫われていない部分

*2:蚕の繭を引き延ばして乾燥させたもの。木綿ではない。