人生が楽になる着物ブログ

着物やアートの視点から人生が楽になるお話をしています。

着物 染め物と織物の違い。

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●染め物と織物の違い

人生が楽になる着物ブログ、あのねです。
アートと染織を学んできて、現在着物メーカーで働く私が着物で毎日が楽しくなるお話をしています。

今回は着物の染め物織物は何がちがうの?というお話です。

このサイトに来て頂いているということは、着物に興味をもって来てくれた思うので、

着物業界で働く私が、着物の分類についてわかりやすく説明していきますね。

着物の基礎知識をわかりやすく学びたい人におすすめです!

● 染め物と織物は柄の作り方の違い。

着物において染め物と織物の決定的な違いは、柄の作り方です。

着物も衣服なので、布でできています。布を作るためには縦糸と横糸を交差させて織っていく必要があります。

一部、編み物や不織布のように織るという行為をしなくても作れる布は存在しますが、着物の場合はそういった素材は今のところ一般的に使われていないのです。

そのため、すべての着物は織って作られているとも言えます。

じゃあ着物はすべてが織物ともいえるかもしれないのですが、着物で染め物と織物を区別する場合はそういった分類ではないんです。

これは、どう分けているかというと、染めで柄を作っているのか、織りで柄を作っているのかの違いです。

●染め物は白い生地に絵を描くイメージ

  • 染めの着物

白い糸で生地を織りあげて、その上に染色(絵を描くなど)をすることで柄を作った着物。



●織物は先に染めた糸を組みながら柄を出すイメージ

  • 織りの着物

先に糸の色を染めて、いろんな色の糸を組み合わせて織り込みながら柄を作った着物。

以上のように染め物と織物だと作り方が全然違ってくるんですね。そのため、出来上がった着物の印象も変わってきます。

着物は染め物の方が豪華にできる。帯は織物の方が豪華にできる。


よく言われる分類として、着物は染め物が格が高い。帯は織物が格が高いと言われます。

これは染め物の着物の方が織りの着物よりフォーマルなものが多く、

織物の帯の方が染めの帯よりもフォーマルのものが多いという意味です。

これは着物と帯の格式区分とかを説明する時に必ずといっていいほど言われる内容なのですが、

なぜそうなっているのかについて書かれている情報がなさそうだったので

私の考えを書いておきます。

この着物と帯の格式が染め物と織物で逆転するのは実物を見比べるとよくわかるのですが、

着物と帯の使われ方や構造、柄の作り方に大きな違いがあるからなんですね。

織物の場合はたくさんの色数を使って複雑な柄を織るとどうしても裏にたくさんの糸がわたってしまいます。

糸がわたるというのはどういうことかといいますと、縦糸と交差する場所がなく横糸の一部が裏で浮いている状態になっていることを指します。

つまり、そのままだと横糸が引っかかったりしやすいですし、全体の糸の量も多くなるので生地が重くなります。

そのため、織物の着物では色数をたくさん使ったりしてフォーマルで豪華なものを作ろうとすると生地が重くて着づらいですし、

裏に糸がたくさん出ているので、単衣(ひとえ)といって裏地をつけない着物は作れなくなります。

織物の着物は色数を少なめにしないといけなかったり、生地の組織を複雑にすることは難しいのでカジュアル目な印象のものが多くなる傾向があります。

染め物の帯は格が低いものが多いのは逆の理由です。

染めの場合は平面の上に柄を染めて描いていくので染料の透明感の美しさは出るのですが、生地の組織で立体感を出すのには向いていません。

生地自体が凹凸が多かったり、特殊な素材を使ったりしていると染めをうまく施すことができなくなるからです。

それに対して織物の帯は金や銀の箔を素材として使ったり、糸の種類や織るときの組織の作り方によって立体感を表現しやすいため

染めの帯に比べて豪華な印象を表現しやすいです。

そのため、フォーマルな帯はそのほとんどが織物で作られているので帯の場合は織物の方が格が高いとよく言われるのだと思います。

帯と着物の格の考え方も
用途や染織の技法の特徴によってきまってきているんですね。


●染め物と織物では制作の仕方が全く違うので特徴も異なる。

ここまで、染め物と織物の違いについてお話してきました。

まとめてみると、

  1. 染め物と織物の違いは柄の作り方。
  2. 白い糸で織って、後から染めて柄を出すのが染め物。
  3. 先に糸を染めて、たくさんの色糸で織りながら柄を出すのが織物。
  4. 染め物か、織物かで出来上がる雰囲気や構造も違うので着ていく場所のイメージも違う。

以上のような内容でしたね。

このブログでは着物に少しでも興味を持ってくれる方が増えるように、

難しい染織の技術や着物の文化についてできるだけわかりやすく発信しています。

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